孝子がはじめてその街で一番大きいデパートの化粧品売り場に行った時、
鼻孔をくすぐるその香りは以前どこかで・・・・・・
「すみません、それなんていう香水ですか?」
「アラミスです。男性用ですが女性にも人気があります」
孝子は、アラミスを左手の手のひらに吹き付けてもらった。
やはりそうだこの香り・・・・・・・・・・
孝子が、故郷の町に帰るため東京駅の下り新幹線乗り場に着いたのは正午過ぎ、
ふと気がつくと目の前には三代目ジェームス・ボンド役のロジャー・ムーアが、
アタッシュケースを持って立っていた。
うそだろうと思いながら「007のロジャー・ムーアさん?」
彼は「オー・イエス サンキュー」と言いながら握手してくれた。
あの香りを残して・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・